2010年11月12日金曜日

アメリカの野生バッファローはなぜ消えた?

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Taylor, S., "Buffalo Hunt: International Trade and the Virtual Extinction of the North American Bison", American Economic Review, forthcoming.

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16世紀には、北アメリカには2500万〜3000万頭の野生バッファロー(アメリカンバイソン)が生息していたのだが、19世紀には1000頭あまりに激減したことはよく知られることである(Wikipediaリンク)。これに関しては、アメリカ軍隊やネイティブアメリカンの狩猟や、または大陸横断鉄道建設の邪魔になったということが要因として知られている。

著者のScott Taylorはこの現象に対して、国際貿易の理論、そして国際貿易の統計を用いた実証的な分析を通して、従来の説明とは違った要因を提示している。それは以下の3つである。

1. (当時の資料が示す)バッファロー関連製品の価格が、供給量の変化に対してほとんど変化しなかった(つまり、バッファロー関連製品の需要の価格弾力性が非常に高かった)こと。言い換えれば、バッファローが大量虐殺されて市場に多く供給されても、市場価格がそれほど下落しなかったことが、ハンターたちに大きな狩猟のインセンティブを与えたという説明を可能にする。
2. 鞣し(なめし)技術の進歩によって、バッファローの皮革が商業価値の高いものに商品化できるようになったこと。
3. バッファローの狩猟にたいする規制が政府によってなされず、オープンアクセス状態であったこと。

1.2.に関しては、ヨーロッパでの産業用皮革製品への需要と、ヨーロッパでの鞣し技術の発展が大きく影響し、3.に関しては、アメリカ政府の失策であることから、「野生バッファローの激減の要因は、国際貿易を通じたヨーロッパとの関係とアメリカの政策にある」ことを示している。

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論文の前半はシンプルなrenewable resourceの理論モデルの提示、後半が実証的なデータやファクトの提示と分析という構成。実証パートは割と大雑把なものだけれど、「歴史的な事実に理論とデータで新しい見方を提示する」という研究は、読んでいてもやはり面白い。AERにforthcomingであるらしいが、それもうなずける。

(著者のScott Taylor教授からご親切にもハードコピーを郵送いただいたこともあって、ここで紹介させていただきました。)

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