1984年まで、アメリカでは飲酒が認められる下限の年齢に関する法律は、州政府に委任されており、各州によって基準が異なっていた。
1984年のNational Minimum Drinking Age Act により、中央政府はアメリカ全州において「21歳未満の飲酒とその保有を禁止する」ことを定めた。
この法律はcontroversialであり、州政府の中には反対するところもあったのだが、中央政府は Federal Aid Highway Act のもと、この飲酒にかんする最低年齢の法律に従わない州政府には、高速道路関係事業費の割当を10%削減するとした。
2008年12月12日金曜日
2008年11月28日金曜日
-徹底抗戦か妥協か- 代表者選択のインセンティブ
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参考
・Besley, T., Coate, S., (1997) An economic model of representative democracy, Quarterly Journal of Economics 112, 85–114.
Hamilin, A., Jennings, C., (2007) Leadership and Conflict, Journal of Economic Behavior and Organization 64, 49-68.
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人口と政策選好に関して異質な2つのグループが存在し、各グループから1人ずつ代表者を選びだす。
代表者は1つの政策に対して協議する。各代表者の戦略は、自らのグループの利益を攻撃的に主張し尽くす(conflict)か、平和的に歩み寄る(compromise)するかどちらかであるとする。
もし、2人の代表者がともにcompromiseすれば、各代表者の主張のweighted averageの政策が実現する(重みは各グループの人数によって変わる)。一方がcompromiseして、他方がconflictを選んだ場合、conflictを選んだ代表者の望む政策が実現するが、conflictのコストもかかってくる。お互いにconflictを選んだ場合には、最終的な政策はお互いがcompromiseを選んだときと同様の結末を見るが、両者にconflictのコストがかかる。
すると、conflictのコストと、各グループの人数の偏りという二つの変数で、この代表者間のゲームの均衡を特徴づけることができる。
さて、各グループは、この代表者のinteractionを見越したとき、どのような(政策的選好をもつ)代表者を戦略的に選出するだろうか?
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このタイプのpolitical economy modelは、Besley-Coate (1997) QJE などの "representative democracy" model によく似ているが、少し違う。Besley-Coateなどのstrategic delegation(戦略的委任)では、戦略的委任によって選ばれた代表者の政策選好がとても偏っているならば、その偏った政策が実現する(もしくはその偏った代表者同士のstage gameがある)。一方、ここでのモデルでは、両代表者の選好が偏っていたとしても、mutual compromise やmutual conflictによって、中庸の政策が実現する。これは代表者間の政治的駆け引きをモデル化するのに都合が良いかもしれない。
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「あるヤクザが、他の組との抗争の際に、攻撃的な鉄砲玉(自らのグループのメディアンよりも攻撃的な人物)を代表として派遣するか、話の分かる親分(自らのグループのメディアンより平和的な人物)を派遣するか?それは組の大きさの差異と抗争のコストに依存するのである。」
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参考
・Besley, T., Coate, S., (1997) An economic model of representative democracy, Quarterly Journal of Economics 112, 85–114.
2008年11月24日月曜日
偏向政治の傾向と戦争
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Jackson, M.J., Morelli, M., (2007) Political Bias and War, American Economic Review 97 (4), 1353-1373.
Jackson, M.J., Morelli, M., (2007) Political Bias and War, American Economic Review 97 (4), 1353-1373.
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なぜ戦争が起こるのか?なぜ大国よりも小国の方が戦争を仕掛けやすいのか?なぜ民主主義国家間の戦争よりも,そうでない国家間の戦争の方が起こりやすいのか?(これは"Democratic Peace"と呼ばれる)
Jackson-Morelli (2007)は,これらをうまく説明する簡単な2国ゲームモデルを提示し,これらの歴史的事実を説明する決定的な要因の一つとして「政治的な偏り(Political Bias)」の存在を指摘する.
ここでの political bias とは,以下のようなものである.
「戦争(の勝利)によって得られる利益と,被る損害(戦争のコスト+負けたときの略奪される利得)を,戦争の開始にかんする意思決定者(独裁者でも良いし,民主主義的なメディアンヴォーターでもよい)がどのように評価しているか」である.
もし,勝利したときの国家的利益のうち,aの割合が意思決定者に帰属し,戦争の国家的コストの a' の割合が意思決定者に帰属するとき,a'/a = 1 であれば,その意思決定者は「偏りがない unbiased」と言える.もし,a'/a ≠ 1 であれば,その意思決定者は,国全体に及ぶ戦争の便益とコストを正しく認識していないという意味で「偏っている」.
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単純なモデルから,いくつかの興味深い結果が得られる.
- Transferを伴うような戦争を回避するかどうかの協議が出来ない場合,偏りのない国は戦争を仕掛けようとはしないが,偏りのある国は戦争を仕掛けるインセンティブを持つ.このインセンティブは,自国の所得に対して減少的で,他国所得に対して増加的である(つまり,小国ほど,戦争を仕掛けるインセンティブが大きくなる).
- もしpolitical biaseが存在しないならば,一方から他方の国へのtransferをともなうことで,戦争を回避することが可能である.
- 片方(もしくは両方)の国が,強く偏っている場合には,どんなtransferを用いても,戦争を回避することはできない.
- 戦争回避のためのtransferが行われうる場合には,少なくとも一方の国は,戦略的に偏った政治家を選出するインセンティブを持つ.
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さて,このモデルには決定的な問題点がある.それは,戦争の直接的なコストが「国民所得の一定割合」であり,戦争に勝利したときの戦利品が「相手国の国民所得の一定割合」というモデルの仮定である.この仮定の下では,明らかに,大国(所得の大きな国)は,小国よりも戦争の直接コストが大きくなり,また,戦利品の大きさも小さくなる.よって,政治的偏り云々以前に,小国は大国よりも戦争のインセンティブは高くなる.自明である.この仮定は,事前のtransferが戦争回避に有効かどうかの分析結果にも,大きく影響するかもしれない.
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