2008年11月28日金曜日

-徹底抗戦か妥協か- 代表者選択のインセンティブ

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Hamilin, A., Jennings, C., (2007) Leadership and Conflict, Journal of Economic Behavior and Organization 64, 49-68.

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人口と政策選好に関して異質な2つのグループが存在し、各グループから1人ずつ代表者を選びだす。
代表者は1つの政策に対して協議する。各代表者の戦略は、自らのグループの利益を攻撃的に主張し尽くす(conflict)か、平和的に歩み寄る(compromise)するかどちらかであるとする。

もし、2人の代表者がともにcompromiseすれば、各代表者の主張のweighted averageの政策が実現する(重みは各グループの人数によって変わる)。一方がcompromiseして、他方がconflictを選んだ場合、conflictを選んだ代表者の望む政策が実現するが、conflictのコストもかかってくる。お互いにconflictを選んだ場合には、最終的な政策はお互いがcompromiseを選んだときと同様の結末を見るが、両者にconflictのコストがかかる。

すると、conflictのコストと、各グループの人数の偏りという二つの変数で、この代表者間のゲームの均衡を特徴づけることができる。

さて、各グループは、この代表者のinteractionを見越したとき、どのような(政策的選好をもつ)代表者を戦略的に選出するだろうか?

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このタイプのpolitical economy modelは、Besley-Coate (1997) QJE などの "representative democracy" model によく似ているが、少し違う。Besley-Coateなどのstrategic delegation(戦略的委任)では、戦略的委任によって選ばれた代表者の政策選好がとても偏っているならば、その偏った政策が実現する(もしくはその偏った代表者同士のstage gameがある)。一方、ここでのモデルでは、両代表者の選好が偏っていたとしても、mutual compromise やmutual conflictによって、中庸の政策が実現する。これは代表者間の政治的駆け引きをモデル化するのに都合が良いかもしれない。

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「あるヤクザが、他の組との抗争の際に、攻撃的な鉄砲玉(自らのグループのメディアンよりも攻撃的な人物)を代表として派遣するか、話の分かる親分(自らのグループのメディアンより平和的な人物)を派遣するか?それは組の大きさの差異と抗争のコストに依存するのである。」

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参考
Besley, T., Coate, S., (1997) An economic model of representative democracy, Quarterly Journal of Economics 112, 85–114.

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