2010年12月12日日曜日

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日経BP社主催の、西日本アカデミックサポートプログラム(西日本 インカレ ゼミ発表大会)、が大阪経済大学にて開催れた。僕のゼミからも一つチームが参加した。そして、僕のゼミ代表が、栄えあるグランプリに輝いた。

「初めて聴く人にも分かりやすく話すこと」「自分たちが実際に手足を動かして得た情報しか使わないこと」「オリジナリティを追求すること」をテーマに、これまで学生さんたちは、不安や恥ずかしさ(街頭調査などを嫌ほど行った)を乗り越えて、研究に取り組んできた。

行動経済学で取り扱われる「バンドワゴン効果」について、紅茶のテイスティング実験という社会実験を元に(他の実験も加えて)、その発生条件を考えるという、壮大なテーマである。

道ゆく見知らぬ人に、「得体のしれない液体を飲んでもらう」というのは、とても骨の折れる作業である。そういう社会実験を400人を遥かに超える人々に対して行ったという事実だけでも、彼/彼女らの努力は並大抵のものではないと思う。僕のような安楽椅子(アームチェア)理論経済研究者には、到底出来ない作業である。

それだけでなく、僕のゼミ生さん達は、プレゼンテーションの練習も、人一倍時間をかけてやってきた。原稿を見ない・持たないこと、聴衆の目を見ること、表情を作ること、「この部分で一秒ほど間をとり、この部分では少しゆっくり目に発話すること」そういう細かな練習を繰り返し、完璧なプレゼンを作るべく練習していたのだ。

プレゼンター自身がしっくりこない部分、論理的に納得出来ない部分をぎりぎりまで排除し、大切な部分は聴衆がうっかり聞き逃しても後でリカバーできるように配慮するなど、細心の注意を考慮した、本当によくできたプレゼンテーションだったと思う。


そして、何より僕がプレゼンターの2人を褒めてあげたいのは、「前に出てプレゼンをおこなったこと」である。他の大学チームのプレゼンも素晴らしかった。ただ、一つ、プレゼンのデリバリーに関して決定的な差があるとしたら、それはスクリーンを背にして舞台の中央、そしてスクリーンの袖、舞台の端、と縦横無尽に、ゆっくり動きながらプレゼンをおこなったことだろう。他の全てのチームは、舞台の1番奥、原稿台がある場所に不動でプレゼンをおこなっていた。

たくさんの聴衆の前で、原稿も持たず、スクリーンを背にして、前に出る。これはとても勇気の要ることだ。しかし、そうやって、自分の他に頼るものをなくして初めて、発せられた言葉が「自分の言葉」になるのだと、僕は気付いた。

僕はプレゼンを練習する学生さんたちに何度も
「まだまだ自分の言葉じゃないね。そんなんじゃ、会場の全員が『僕に向かって話しているのではないな』と感じるよ。君らいったい誰に向かって話してんの?」
と(僕自身が出来ないようなことを)アドバイスしていた。プレゼンターの2人は、あの大舞台で確かに、みんなに向かって話していた。僕は鳥肌が立った。



そうは言っても、まだまだ改善の余地がある。そしてこの大会に優勝してもなお、その改善点について今後の課題を模索している学生さんたちを見て、僕は何とも言えない嬉しさでいっぱいになるのだ。


本当におめでとう。当初からの目標をきちんと叶えたこと誇りに思ってください。


大会の後、優勝チームと一緒に祝杯をあげた。「いけるところまでいこう」と言いながら頑張ってきたこの取り組みも、これでひとまずお終い、となる。その寂しさもあるのだけど、彼/彼女らがこれから就職活動で忙しくなってしまい、ゼミ活動とは疎遠になってしまうことの寂しさを、僕は感じた。




2010年12月5日日曜日

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応用地域学会2010 名古屋大会「環境政策の経済分析」セッションにて、論文を報告させて頂きました。
討論者の先生や座長の先生から、多くの建設的なご意見を頂きました。そのうちのいくつかは、発表論文には組み込むことはできそうにありませんが、その先の論文の構想に有益なものであり、大変感謝しています。この場を借りて感謝申し上げます。ありがとうございました。

初めて参加した学会でしたが、学会後の食事会も含めて、刺激(食事の刺激は、タイ料理の辛さ(笑))的な出張となりました。また、経済学とは少し毛色の違う、OR系の報告もいくつか聞きました。分野が違うと、分析する内容は似ていてもアプローチが全然違うことに、大変驚きました。僕には、何でも彼んでもagent間の戦略的相互依存関係で説明してみようとする(悪い)癖があるので、特にロケーション問題などのOR的なアプローチには、少し戸惑いを感じました。両者をつなぐ研究、という方向性も、面白いかもしれないなぁなどと、そんなことを思いました。

2010年12月2日木曜日

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講義1コマ、演習1コマ。

卒論シーズン真っ盛り。僕のゼミ生も例に漏れず今頃になって慌てふためいているのだけど、中にはとても面白そうな卒論を進めている学生さんがいる。

その中の一人は、都道府県別の肥満率の差異を、飼われているペットの種類、で回帰しようという試みを行っている。具体的には、県別の「ペットとして犬が飼われている」「ペットとして猫が飼われている」の割合のデータを使用する。犬は飼うと散歩が必要なのに対して、猫は散歩が必要でない、だから、犬が多く飼われている県は猫が多く飼われている県よりも肥満率が低くなるだろう、というロジックである。(逆の因果性についても考慮が必要である。そもそも肥満でないから、猫よりも犬をペットとして選んでいるのかもしれない、からだ。)

こういう研究は僕は個人的に大好きだ。素朴な発想を、それなりの学問的なツールを使って明らかにしてみせようという、その態度自体に好感が持てる。不思議なことに「卒論」と言うと、あまり真剣に考えていない学生さんほど、アカデミックな学問ぽいテーマを選ぶことが多いようだ(やる気や知識のなさを、テーマの堅さが補ってくれると考えているのかもしれない。当然、そんな甘い話ではない)。

僕の密かな楽しみとしては、『もし犬を飼うことが肥満を抑制することに繋がるのならば、(少々paternalisticだが)政府は国民の肥満を抑えるために、ペットとしての犬に補助金を与えれば…、って綱吉かよ!』という一人ツッコミの一文を、彼の卒論の註にでも入れてもらうことだ。これは冗談。
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今週の日曜日、名古屋大学において開かれる応用地域学会名古屋大会の準備も何とか終わる。プログラムには論題が"Firm Incentives for Environmental R&D under Non-cooperative and Cooperative Policies"と書いてあるが、論文のタイトルを"Environmental Innovation and Policy Harmonization in International Oligopoly"に変更している。討論者は南山大学の寳多先生。

報告スライドは以前別の学会で前バージョンを報告したときに使用した英語のものを、新たに日本語に書き直した。指導している学生さんには、普段から「もっと図解されていて、良いビジュアルの、インパクトのあるプレゼンの資料をつくってください」などと指導している割には、自分のものは無愛想につくりたくなる。ビジネスのプレゼンにないような「無骨ぽさ」を演出したくなるのは、なぜだろう。

ここでの報告が終わり次第、頂いたコメントや反応を組み込んで、投稿しようと考えている。どのような投稿先が考えられるのか?についても、学会で諸先生方からアドバイスが貰えれば嬉しく思う。
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2010年12月1日水曜日

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講義1コマ、演習1コマ。

演習では、同じ大学のO先生のゼミと合同で、ディベート大会の1回戦を行った。テーマは「日本における解雇規制を緩和するべきである」であり、僕のゼミが否定側、Oゼミが肯定側と分かれて、議論をした。

ディベートの勝敗はともかく(僕のゼミは大敗した)、議論の質の低さに、とても残念な思いがした。準備不足、チーム内での議論不足、論理性のない話し方、言葉遣いの悪さ、などなど、おおよそディベートと呼べる代物ではなかった。ゼミ大会などもあり、今回のディベートの為の準備期間が僅かしかとれなかったことや、就職活動の早期化で、3回生の学生さんが既に就職活動モードになっていることを考慮してもなお、お粗末なものだった。

ディベート大会は、次週も同様に行われる。厳しいコメントをしておいたので、次週はもう少ししっかりとした姿を見せてくれることを期待している。

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論文のレフェリー作業を終え、レフェリーレポートをエディターに提出した。実はこの論文、2回も大幅にリバイズされて、僕は既に「少々のタイポを治したらアクセプト」という旨を通知していた。しかももう一人のレフェリーはまだ納得していない様子で、さらにリバイズされたバージョンの審査を行っていたのだ。何だか少し、以前のバージョンの方が良かった気がしないでもないが、気持ちよくアクセプトを伝えるレターを書いた。他人の論文ではあるが、パブリッシュされるのがとても楽しみだ。

環境政策と不完全なコンプライアンス

環境政策における imperfect compliance を扱った一連の研究をサーベイする。詳細なメモは後に残すとして、とりあえずメモ書き。