2010年8月26日木曜日

投入財価格が交渉によって決まるとき、競争緩和が社会に有益?

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Symeonidis, G., (2008) Downstream competition, bargaining, and welfare. Journal of Economics and Management Strategy 17, 247-270.
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製品差別化された財を数量競争する寡占産業において、それぞれの企業が生産のinput価格(賃金や中間財仕入れ価格)を上流組織(労組や中間財生産企業)とNash交渉によって決めるような状況を考える。このとき、寡占的産業の競争の程度や、交渉力の配分が、企業の利潤、上流組織の利得、消費者余剰、そして社会余剰にどのような影響を及ぼすのかを考察している。

理論分析の結果は、競争にかんする我々の伝統的な見方(競争が社会を豊かにする)を覆すものとなる。つまり、状況次第では、競争の程度の低さが社会を豊かにする場合があるというものだ。

直感は以下の通り。まず、寡占産業の競争緩和(後述)は、交渉によって決まるinput価格を低下させる。これは競争緩和により、input価格の増加が自企業利潤に及ぼす負の影響を大きくすること、そして、上流組織側も高いinput価格を提示したくなくなることによる。これにより、競争の緩和が消費者余剰に及ぼす効果が理解できる。競争緩和はダイレクトに消費者余剰を小さくするマイナスの効果と、input価格の低下によるプラスの効果の大小関係で決まる。もし、上流組織にある程度の交渉力があるならば(そして製品差別化の程度が弱いならば)、後者が前者をdominateし、晴れて逆説的命題が成立する。

驚くべきことに、input価格が二部料金制である(下流から上流への固定の移転も含む)ならば、この逆説的命題がより緩い条件で(論文の仮定の範囲ではsurelyに)成立することが示される。

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様々な仮定がこの論文の大きな制約となっているのは間違いないが、とても面白い結果である。しかし私が最も興味深く感じたのは、「(2社の)複占市場での競争の程度」をある連続変数(λ)」で表すような定式化の方法である。

具体的には、複占企業iの最大化すべき利潤の定義を、

Πi = πi + λ πj,

where

πi = (Pi - wi) xi & λ ∈ [0, 1]

(Pi: 財価格、wi: input価格、xi: 生産量)
というような、あたかも複占企業が利他的な利潤関数を持つような定式化をしているところである。λ=0 はクールノー競争を、λ=1 は結合利潤最大化、つまり共謀の状況を表現していることになる(実現する企業の利潤は飽くまで πi である)。競争の程度(緩さ)を表す変数 λ は、"coefficient of cooperation" by Cyert and deGroot (1973, AER) などと呼ばれ、寡占モデルでは良く使用される(らしい)。

この手の目的関数のモデル化は、個人の利他性を進化的アプローチで分析する一連の研究にもよく使われる。具体的には、個人iの効用が、

Vi = ui + λ uj

であるとして、意思決定(最大化)の際には Vi を最大化するよう行動を決め、その個体の利得(物質的効用、などと呼ばれる)は、ui で測る、という具合にである。

少し話はズレたが、この定式化は応用範囲の広い優れたものであることを頭に置いておきたい。

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(補足 2010.08.31)

Matsumura-Matsusima-Cato (2009) では、企業の目的関数を

Ui = πi - α πj

と定式化している。この設定では、α = 0 で通常のCournot競争を、α = -1 でmonopolyを、α = 1 で完全競争(Bertrand)を扱うことができる。このような relative performance approach により、competitiveness(競争程度)を連続変数として扱えるだけでなく、Cournot, Bertrand, Monopolyをその特殊ケースとして内包するモデルとなるというメリットがある。

2010年8月13日金曜日

やる気を起こすちょっとした言葉集

ネットで見つけた「やる気を起こすちょっとした言葉」集
  1. すぐ後ろに殺し屋が立っていて、自分の頭に銃を突きつけながら「これでもやらないつもりかい?」と言っているところを想像する。
  2. あいつだったらどうするかな…
  3. ちょっとやって、それからやめてもいい。
  4. 次の物理的な(小さな)アクションは何だ?
  5. 今やらなかったらいつやる?
  6. やらないメリットは何?

参照:http://bit.ly/MrFRZ and http://bit.ly/barGWN

2010年8月12日木曜日

英文ライティングTIPS

自然な英語論文を書くための3つのTIPS
  1. Googleを使ったライティング
    英文ライティングにはgoogleのフレーズ検索が便利。検索したい一連の語を " " で挟んで検索する。使われる頻度(ヒット数)で適切さを判断する。また、ワイルドカード検索も、かなり使える。適切な前置詞、形容詞、動詞などがわからない時、わからない部分を * (sp アステリスク sp)として検索。
    また、これらの検索ワードと一緒に economics も同時に検索すると、「経済学において」どのような語句が妥当かがわかる。journal と一緒に検索するのも良い。

  2. パソコンの検索ツール(例:spotlight [mac])などで、フォルダ検索
    自分のパソコン内の論文pdfwが保管されているフォルダ限定で、テキスト検索する。その使用法のために、特に興味のない論文も「辞書用フォルダ」に入れておいても良いかもしれない。

  3. Springerの exemplar: words in context を使用
    SubjectやJournalベースでフレーズを検索できる。Googleよりもアカデミックなもの「だけ」を抽出できるが、まだβ版であり、これからの検索機能強化に期待。