2011年10月13日木曜日

有料メディアと無料メディア、どちらが良い?

Esteban,L., Hernandez, J.M. (2011) Specialized advertising media and product market competition. Journal of Economics, forthcoming.

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Tirole (1988)のinformative advertisingモデルに内生的な広告費用決定を組み込むというシンプルな拡張。メディアの視聴がタダか有料かの違いが、内生的な広告費用の決定を通じて水平差別された寡占市場にどのような影響をもたらすかを検証。製品が差別化されていないほど、消費者の財の消費からの効用が小さいほど、企業の利潤が大きくなる可能性を示唆。

モデルはほぼ、Tirole (1988) Industrial Organizationテキストの 7.3.2.2 節に準拠している。論文のキーとなるのは、Tirole (1988) p.293 にある「広告費用の増加が企業の利潤を高める」というもの。この直感としては、「広告費用の増加は直接的に企業のコスト増につながるが、一方で広告量の(両社共の)減少が、価格競争を緩和して企業の独占力を強める効果がdominateするので利潤を高める」というもの。さて、もし広告費用がメディアによって内生的に決められるならば、タダ視聴できるメディアと有料(視聴)のメディアでは広告価格が異なるので、企業利潤や厚生の比較が可能になるだろう。これが本論文のモチベーションである。

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さらなる拡張としては、メディアが独占状況ではなく、メディア間の競争がある場合を考えることえあろう。簡単な直感として、もしメディア間で結託があれば、広告費用が高くなり、そして(逆説的に)それがクライアント(広告企業)の価格競争を緩めて利潤が高くなる、というものだろう。または、メディアへの自由参入が広告費用低下をもたらし、それがクライアント(広告企業)の価格競争を激しくして利潤が減る、というもの。この場合、メディアへの参入規制撤廃(参入促進)が二重の厚生効果をもたらしてくれそうだ。しかしながら、これらは安直すぎて論文になるかどうかはわからない。