2010年7月26日月曜日

行政区域をまたがるチャリティーとクラウディング・アウト

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Lee, K. (2008) Voluntary Contributions and Local Public Goods in a Federation, Journal of Urban Economics, 63, 163-176.
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しばしば低所得者への補助などのチャリティーが、行政区域(地域)をまたがる大きなチャリティー団体によってなされることがある。ここに2つの行政区域(地方政府)があり、各地域の住民が自発的にチャリティー団体に寄付をするシチュエーションを考える。あつまった寄付は、「ある一定の割合(ルール)」で、2地域の低所得者に分配されるとする。また、各地方政府は、その地域住民から税を取り、自地域の低所得者への支援に使っている。各住民は、自分の地域の低所得者の厚生からも、他地域の低所得者の厚生からも、自らの効用として(公共財効用として)効用を感じる。

もし、地域が一つしかなければ、これは伝統的なvoluntary provision of public goodsとなる。なので、地方政府の1単位の政府支出増加(低所得者への支援増)は、one-to-oneのcharitable givingの減少をもたらすことになる。しかし、ここでは、2つの地域があり、ある地域で集まったcharitable givingが他地域へも流れることになるというリンクから、このone-to-one crowding outは成立しなくなる。
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当然と言えば当然の結果。地方政府の公共財供給増加(低所得者への援助増加)は100%自地域住民によってファイナンスされるが、その分だけ自地域住民がcharitable givingを減少させても、チャリティーを通じての公共財減少は「ある一定の割合」しかないからである。よって、政府支出の増加は、自地域の公共財水準を増加させ、他地域の公共財水準を減少させる。至極当然。

このpaperは重要な側面、つまり、チャリティー団体の意思決定(目的)を考慮に入れていない。つまり、チャリティー団体の分配ルール(論文中の θ )が外生変数であるのだ。もし、チャリティー団体の意思決定を考慮するなら、政府支出の増加により、分配ルールを変更するのが目的にかなうかもしれない(例えば ¥max_{¥theta} z_1+z_2 とか、¥max_{¥theta} ¥min[z_1, z_2] とか)。この点を考慮すると、Federation Linkを考慮しても、理論的には100% crowding-out theoremは成立する可能性がある。

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